ある滞西録

秋によせて

このうつくしい季節の中にずっと閉じ込められてしまいたい気がする。たとえこれから数十年の月日が流れ去っても、わたしの2023年の秋は一葉の絵葉書のようになって、この場所に堆積する記憶の一層として、発光し続けるだろう。このところ、場所は記憶をとどめうるか、ということについてときどき考えている。

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冬から春になる

■1月後半ぐらいから断続的に体調不良が続いている。突然熱がでたり、夜眠れないことがある。仕事は突如繁忙期になり息をつくひまもなく、わたしは重い身体と精神を自らの枷にしながら、欧州の暗い冬の底に沈んでいた。

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